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(翼) |
桜が散る――
家の隅に咲いてた桜も、そういえば散ってたな 3年後、今みたいな気分でこの桜を見ていられるように。 そう祈って、俺は「その学園」に足を踏み入れた |
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(踏み込むような音のあとに、ぶつかる音) |
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聖羅 |
きゃっ |
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翼 |
うわっ!? |
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(2人こける) |
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翼 |
ご、ごめんなさい、大丈夫ですか!? |
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聖羅 |
あ・・・ |
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(翼) |
うわぁ・・・すごい金髪・・・ハーフかなぁ にしても、キレイな子だな・・・ |
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聖羅 |
っ! |
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(聖羅、走り去る) |
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翼 |
あっ・・・ |
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(翼、立ち上がる) |
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【入学式】 |
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夕莉 |
学園長、式辞 |
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(翼) |
はぁ・・・かったるいなぁ・・・どうせ毎年同じ事言ってるだけなんだろうに・・・・ なんか・・・夜間列車なんて使ってきちゃったから真面目に眠・・・ |
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知沙 |
(こそこそと)つーばーさー君!入学式早々眠っちゃだめだよー! |
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翼 |
(こそこそ。少しむっとして) ・・・・何で?式なんて少ない学生の睡眠時間を保障するためのもの以外のなんなわけ? |
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知沙 |
わぁっ、翼君が怒ってる!眠いと切れるタイプ?? |
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翼 |
「翼」でいいよ |
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知沙 |
ふぅん?じゃあ翼。 眠いときはねぇ、他の事考えるとよいよー |
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翼 |
あぁ、よく言われるよね |
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知沙 |
でしょ??まぁおきてなって 今日はおもしろいことが起こるから |
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翼 |
おもしろいこと?何? |
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知沙 |
へへー、起こってみてのお楽しみ♪ だからほら、起きてないと!ね?他の事考えて! |
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翼 |
他のコト・・・ |
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(翼) |
他のコト、か 入学式早々人の話も利かずに他のコト考えてるっていのもあれだけど・・・ |
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【空想】(どんっ) 聖羅「きゃっ」 |
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あれ・・・誰だったんだろう・・・ |
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【空想】 |
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(知沙) |
それはゆーれーだね |
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翼 |
幽霊?てかキミ誰? |
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知沙 |
あ、そっか。見慣れない顔だと思ったら外部生か 何年ぶりだったっけ・・・高等部外部生なら17年ぶりって言ってたな、先生 |
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翼 |
・・・のわりには、気付くの遅いね |
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知沙 |
こんな学園に入り浸ってると外界の変移にはとうんと疎くなっちゃってw |
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翼 |
・・・・そういうものなんだ・・・ |
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知沙 |
そういうもんだってー そだ、自己紹介ね。 私の名前は宮城知沙。3月30日生まれのB型で、好きな食べ物はみかんの黒焼き。 あれ知ってる?おいしいんだよ?体の心からあったまりますっていうやつ 食べたことある?今度作ってあげるよ、本当においしいんだからー!!それでねー |
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翼 |
わぁ・・・質問してきてるのに答える暇を与えないという・・・・ |
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知沙 |
で?そっちはなんて言うの? |
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翼 |
え?あ、うん、千里 翼だけど? |
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知沙 |
千里、翼君、だね。わかった。何か大空に飛び立っていきそうな名前だね |
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翼 |
そう? |
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知沙 |
うん! 私、幼稚園からずっとこの学園だから、決まった人としか付き合ったことないんだー だから、って言うのも何だけど、これからヨロシクねっ |
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翼 |
(キラリーン)うん、よろしく |
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知沙 |
っ!はぅっ! |
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翼 |
ん?なに? |
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知沙 |
・・・翼君の笑顔にアテられた・・・ |
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翼 |
・・・・・・・・(かなりの間)で、幽霊って? |
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知沙 |
(少し小声)流された・・・・!! |
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翼 |
ん? |
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知沙 |
あー、いいのいいの!なんだっけ? |
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翼 |
・・・あぁ、えと、幽霊ってどういうことかなぁ、と |
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知沙 |
あぁ・・・「あれ・・・誰だったんだろう・・・(真似して)」っていうから。 不審者は幽霊だと思えばロマンチックじゃん? |
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翼 |
・・・・・・・・ん?(理解できない) |
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知沙 |
・・・あーっ、もういいじゃんそんなことは!高等部生活1日目、そんなこと考えてて陰険だと思わないの?? |
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(翼) |
なんだか・・・・読めない子だなぁ・・・ |
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【入学式】 |
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(翼) |
宮城知沙、か。いかにも私立エスカレーター学園で育ったってカンジだな。 まぁ俺にしたってずっと田舎育ちだったし、あんな自己採点結果で俺ひとり合格って言うのもフに落ちない所なんだけど・・・ |
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夕莉 |
生徒会長、挨拶 |
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(翼) |
お? |
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(階段上るみたいな音) |
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(翼) |
名門胡条高校の生徒会長か・・・ 相当な人じゃないと務まらないよね まぁ外見は少々荒れてるけど・・・・サングラスとかつけてるし・・・ 高校生とは思えな・・・ |
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隆斗 |
(マイク通して。舞台上は全員マイク通す)生徒諸君!! |
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(翼) |
あ、あれ?なんか聞き覚えあるフレーズが・・・ |
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隆斗 |
ようこそわが私立胡条学園高等部へ。 ウェルカム トゥ 高等部! |
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(翼) |
・・・・テンション高―・・・ |
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隆斗 |
さてそれはおいておいて |
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(翼) |
おいとくんだ・・・ |
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隆斗 |
えー、コホン 我らが胡条高校では、全国屈指の教育学部を掲げる胡条大学への進学を視野に入れた独自の教育を展開している。 諸君もその教育理念によって幼少期から育てられているから分かっているだろうが・・・ えー・・・ せん・・・さと、よく!!せんさとよく!起立!! |
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(翼) |
せんさとよく?名前?日本人かな・・・・ |
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隆斗 |
いないのか?コラ立て!せんさとよく!! |
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明良 |
(無関心的に。ため息交じり)千里 翼君。もしいたら立ってー |
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(翼) |
せんり、つばさ?せんり・・・つばさ・・・なんか聞いたことあるな・・・・ 誰だっけ、日本史で出てきたんだっけ・・・??けどあんな態度で物頼むとかなんか腹立つなぁ・・・ |
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知沙 |
翼!翼!呼ばれてるって!早く立って!! 私たちだけで高等部の生徒会に太刀打ちはできないんだから! |
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翼 |
え・・・?えと、うん・・・・ |
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(立ち上がる) |
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明良 |
かいちょー、立ったよ |
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隆斗 |
・・・お?あぁ、そこか千里 翼! お前は17年ぶりの外部生だ。みんな拍手!・・・よしやめ(結構すぐ) |
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(かなり大きい拍手からすぐやめる) |
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隆斗 |
君は我が校における絶滅危惧種だ。特別天然記念物だ。 我が校の教育理念は黙っていてもいずれ骨身にしみるだろうから、省略する。 今ここで話しておくべきはただ一つ。耳の穴かっぽじってよぉーく聞け。いいかー? ・・・コホン・・・ 生徒会会員になった現在ただ今をもって、諸君新入生はこの倉木 隆斗の下僕と認定されたことを宣言する! |
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(ガシャーン。窓ガラス割って)(騒然) |
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隆斗 |
・・・来たか |
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翼 |
えと・・・ちょっと、何? |
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知沙 |
(笑み含んで)きたよ、おもしろいこと |
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明良 |
めんどくせー・・・ |
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(階段上る音) |
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(翼) |
え・・・副会長が会長の後ろに行った? 窓が割れた後も何も起こってないし・・・ |
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隆斗 |
諸君、騒がせた。気にしないでくれ。 |
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(翼) |
気になるし・・・!! |
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(マイク通してトスって何かが降り立つ音) |
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(翼) |
誰かが・・・会長の後ろに・・・ |
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悠基 |
はい、チェックメイト |
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(ガサ、みたいなノイズ。悠基がマイクをはずして投げる) |
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悠基 |
涼さん! |
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隆斗 |
明良! |
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涼・明良 |
了解(明良はりょーかいって力の抜けた感じ) |
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(翼) |
空中でマイク奪い合って・・・!?あっ、副会長が取った!! |
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明良 |
ふぅ、口ほどにも無いっスね、先ぱ・・・ |
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涼 |
ちっ(走ってマイクを奪う) 残念。隙だらけだ |
83 |
明良 |
っ・・・あーあ、やっぱ残心って必要っスね |
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(走り出してマイク争奪再開) (効果音激化) |
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(翼) |
わぁぁぁぁっ!?何これ、なにが起こってんの――っ!? |
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【夜の街】 (かなりざわつきが激しい)(翼の足音) |
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翼 |
はぁ・・・・今日はなんだったんだろ・・・ あんな戦争みたいな入学式、初めてだよ・・・ しかも、知沙が |
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(知沙) |
下宿の場所?あ、そこなら分かるよー 学校終わったら案内したげるねw |
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翼 |
っていってたから、アテにしてたのに・・・ いつの間にか帰っちゃって、結局見慣れない地図を見ながらこんな時間にこんなところまで来ちゃったし・・・ ・・・・はぁ・・・どうしよう・・・ココ、どこなんだよ・・・ |
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(どんっ。ぶつかる) |
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翼 |
いたっ あ、ごめんなさい、すみません! |
89 |
男 |
あぁ!?ぶつかってきといて謝りゃ済むと思ってんのかぁ!? |
90 |
(翼) |
うわっ、やばっ! 地図見て下向いてたら変な人に捕まっちゃった! 都会は怖いって言われてたのに・・・!!なんなんだこのドラマみたいなお決まりの展開はぁ!? |
91 |
翼 |
ご、ごめんなさい! |
92 |
男 |
さっきの俺の言葉ぁ聞いてなかったのか!?? ・・・と、お?よくみりゃかわいー顔してんじゃねぇか。ほんとに男かぁ? 仕方ねぇ、その顔に免じて許してやるよ。ついてきな |
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翼 |
え!?えと・・・あの・・・ |
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(翼) |
ちょっ・・・やばい展開じゃないっすか!?? どこつれてかれるんだ!?これもお決まりパターンの一端なのか!? てか・・・ |
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翼 |
やだ・・・っ |
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(ばしん。悠基さん、男の手を軽やかにはじく) |
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悠基 |
嫌だって言ってんじゃん 自分がされて嫌なことは他人にしちゃだめだよねぇ |
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(翼) |
来たぁ!お決まり、正義の味方! |
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男 |
なんだぁお前!!こいつのツレか!? |
99 |
悠基 |
それって今この状況で何の関係があるの? |
100 |
(翼) |
あれ?この人・・・・ |
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悠基 |
なにせ、こんな時間に明るい夜の街の公道をふさぐっていうのは、いただけないよね |
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男 |
へっ、文句ならそこの坊やにいいな。そいつが先にぶつかってきたんだぜ? |
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悠基 |
でもちゃんと謝ったんだよね? |
104 |
翼 |
は、はい |
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悠基 |
チェックメイト。おじさんの負けだよ |
106 |
男 |
何!? |
107 |
(翼) |
やっぱり!! |
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(男、悠基につかみかかるものの、あっさりかわされる) |
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悠基 |
おっと いいの?おじさん、僕に絡んだら、葉際 涼さんたちがでてくるけど あ、でも、僕にすら勝てないのに涼さんの相手はムリか |
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男 |
おまえ・・・まさか・・・ |
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悠基 |
僕に余計な手間をかけさせるな さっさと、いね |
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男 |
ひぃっ |
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(男走り去る) |
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悠基 |
(呟く)っていうのは同居人の真似だけど・・・ |
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(悠基、歩き去ろうとする) |
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翼 |
あ、あの! あの、ありがとうございました |
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悠基 |
ん?・・・いいよw こんな時間に一人で歩いてると絡まれるって言うのはお決まりなんだから、気をつけなよ まぁ、僕もお決まりに則ってみてるっていうのは否定できないんだけどね |
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翼 |
へ? |
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悠基 |
だってなかなかないじゃん、こんな王道シチュエーション 人生楽しんだものがちってね。 じゃ。まっすぐおうちに帰りなよ |
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(悠基、歩き去ろうとする) |
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翼 |
あの! |
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悠基 |
・・・なに |
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翼 |
えと・・・ここ、教えてもらえませんか? |
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(地図を見せる) |
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悠基 |
ん? んー・・・・・(意味深に) ・・・ん? |
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翼 |
ん? |
( )内は心の中の言葉って言うことで・・・・